映画の名セリフ
映画には、長い年月を経て色褪せず、後世に語り継がれる名セリフが登場することがあります。
「Here’s looking at you, kid.」(君の瞳に乾杯)は「カサブランカ」(1942)に登場するハンフリー・ボガートのセリフで、あまりにも有名ですね。英語の字面を直訳してもとてもこんな表現にはならないので、翻訳者のセンスが光る会心のフレーズといえそうです。
当然ながら人によって受け止め方が違うので、名セリフ として ネット上で紹介されていても、「だから何なの?」と思うものもありますし、そもそも 映画のそのセリフが使われた場面を思い出せないと面白くも何ともない場合も少なくありません。
「I’ll be back.」(必ず戻る)は、「ターミネーター」(1984)でターミネーター役のアーノルド・シュワルツェネッガーが語ったセリフとして有名で、シリーズでたびたび登場しますが、あの映画あってのセリフですね。ちなみに、初期の台本では“I’ll be back.”ではなく、”I’ll come back.”だったそうです。ちょっとした違いですが、変更がなければ名セリフとして残ったか怪しいと感じます。
名セリフの中には 人生訓として心に残り、ものごとを決めるときの拠り所 になる場合もあります。
「フォレスト・ガンプ」に登場する、「Life is like a box of chocolates. You never know what you’re gonna get.(人生はチョコレートの箱のようなもの。開けてみないと分からない。)」は、まさに人生訓といて人々の心に残っているのではないでしょうか?
「キッズ・リターン」のエンディングで交わされる会話は、自分自身を鼓舞するセリフとして大切にしているので、映画について紹介するとともに、このセリフにまつわる思いを書いてみたいと思います。
「キッズ・リターン」は、1996年に公開された、北野武の第6作監督作品です。
あらすじ
落ちこぼれの高校生マサルとシンジは、三年生になって周りが受験ムード一色になっても、喧嘩やカツアゲなど、やんちゃ気ままに過ごしていた。ある日、カツアゲの仕返しに連れて来られたボクサーに一発でぶちのめされたマサルは、自分もボクシングを始めることにする。使い走りの子分のように扱っていた、いかにもひ弱そうな同級生のシンジを誘い、一緒にジムに通い始める。皮肉にもボクサーとしての才能があったのはシンジであった。
ボクシングに見切りをつけたマサルは、極道の世界に入る。高校を卒業しプロボクサーとなったシンジは快進撃を続け、マサルは極道の世界で成り上がっていく。
時は流れ、それぞれの世界で挫折を味わったふたりが再会する。かつて通った高校の授業中に、目的もなくジグザグに校庭を自転車で二人乗りする。教室の窓からは、煙たそうな視線で教師が、そして好奇のまなざしで在校生がふたりを眺めている。 シンジはマサルに「マーちゃん、俺たちもう終わっちゃったのかな?」となにげなく問いかける。マサルは「馬鹿野郎、まだ始まっちゃいねぇよ」と答えるのだった。
「まだ始まっちゃいねぇよ」は、いつまでか?
映画のエンディングのシーンでも、主人公のふたりはとても若く、「まだ始まっちゃいねえよ」というセリフは違和感なく受け入れられます。
でも主人公がもっと年上だったら?40代だったら?50代、60代だったらどうでしょうか?
映画のラストシーンであれば恰好がつかなくて、観客から失笑を買うことになるかもしれません。
私自身、自分より少し年下の人と話をしていても、「もう年だから○○」と、 全く新しいことにリスクを取って取り組むことはありえない、といった主旨の話を聞くことが多々あります。
実際こういった 考え方が大勢を占めていて、無駄にあがいたりせずに、その年齢相応の生き方を模索すべきだと、しばしば思うのですが、一方でボクサーになるわけではないので、これから新しいことを始めても不可能というわけではなく、一番の支障は自分自身の年齢に対する思い込み、または何かをやってみようとする心の持ち様、が一番大きいと思います。
新しいことを始めれば失敗するリスクはつきものなので、やってみたけどうまくいかなかったということは、かなりの確率でありそうですが 、それでもやらずに諦めるよりはずっとよい。いくつか考えていることがあるので、新たなことに取り組んでいく 1年にしたいと思っています。
最後に、映画ではないのですが、かつてサッカー日本代表を率いていたイビチャ・オシムの金言で締めくくります。
「自分で自分を信じられなくて、誰が信じるんだ!」
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参考文献
https://web.archive.org/web/20160624000849/http://office-kitano.co.jp/archives/movie/kidsreturn.html
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