1マイルの壁

陸上競技では有名な話で、31年間破られなかった1マイル・レースの記録があります。

1マイルを4分以内で走ることは当時、人間の限界を超えており、挑戦すること自体が無謀と言われていました。実際、多くの選手が挑戦しますが、ことごとく壁に打ち返されてきました。

1954年、ついにロジャー・バニスターという選手が4分の壁を越え、3分59秒04の記録を打ち立てます。

ところが、翌月に別の選手がこの記録を塗り替え、約3年間で15名の選手が4分の壁を破ります。

統計学では説明の付かない事態です。

4分の壁を作っていたのは、人間の脳であったわけです。

この事実は、人は、誰にもできないことは自分にもできない、他人ができたことは自分もできる、と思うものだということを示しています。

この話には続きがあって、同じグループに属している人の記録は、より強く影響を与えることがわかっています。

ケニアのキプチョゲが、非公式とはいえ2時間を切るタイムでマラソンを走りきると、ケニアやアフリカ選手の記録は一気に向上します。一方で、日本人の記録にはあまり影響を与えません。日本人選手は、黒人特有のバネが偉業を可能にしていると解釈するのかもしれません。

同じような話は、異なる種目のスポーツでも存在していて、私は、重量挙げで数名の選手が大台(たとえば200キロ)の壁を越えられずに苦戦していたけれど、あるときひとりの選手がこれを挙げたという話が伝わると、他の選手も次々と壁を越えていった、という話を聴いたことがあります。私はこの話を部下たちに伝え、「やればできるというマインドもってあたれば、結果は変わってくる」とのメッセージを浸透させるようとしたことがあります。重量挙げの話にはオマケがあります。最初に200キロを挙げたというのは誤報だったというものです。

ビジネスの世界でも同じようなことはあって、狭いコミュニティから優秀な経営者続々登場することがあります。

多くの起業家を輩出したリクルート、ファイナンスの世界では野村證券、ITでどう支援の世界ではIBから多くの経営者が育ちました。

業界で№1、優秀な人材を生みやすい企業風と、といった背景もあるでしょうが、「自分にもできる」と思えるかどうかも、大きな要因ではないでしょうか?

スポーツの世界では、カタールワールドカップで活躍した、三苫薫、板倉滉、権田秀一、田中碧は同一のサッカークラブで小学生時代を過ごしています。

 そう考えてみると、根拠はなくても、「自分には大きなコトができる」と信じられる人は、実際に大きな事を成し遂げる可能性が高くなることがわかります。

成功者の中には、論理的にものごとを判断できるようになる前の幼少期に、「おまえは日本一、世界一になる」と肉親から言われ続けた人が少なくありません。

ここでは敢えて例を挙げません。この話が頭の片隅に残っていると、あぁこの人もそうなのかと、気づくようになると思います。

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